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尼港事件の現場を訪ねて その5

守備隊兵舎から西へ300mほど行くと、そこは当時、繁盛していたと言われる遊郭跡があります。

やはり、この世界は町の外れにあるんですね。

今は空き地になって殺風景な感じですが、おそらく93年前(1920年)の事件以降も、
この場所には建物が建つことはなかった。

そんな印象さえ受けます。

何せ、ニコラエフスク尼港事件後もほとんど街並みが変わっていないんですから。

尼港の遊郭跡地
              尼港の遊郭跡地

尼港の遊郭には2件の遊女屋があったそうですが、

その一つに

「お菊さん」という名物「お姐さん」がいたそうです。

   名前は「お菊さん」。

娼家名は夕霞楼か朝日館か、それはともかく地元ではたいそう人気の「お姐さん」だったようです。

元館長ソーニャさんによると、20年近く前に日本から小説の題材にしようと、
資料館に問い合わせがあったというから、その名は語り継がれていたのかも知れません。

遊郭近くにある家並み
             遊郭近くにある家並み 

それにしても日本人の商魂はたくましい限り。

こんなシベリアの果てまで遊郭をつくってしまうんですから。

   しかし、   よーく考えてみると、

日本人がただの助兵衛ということではなく、
むしろ日本の伝統的文化と解釈すべきなのではないでしょうか。

この時代、満州でもこの手の商売は流行っており、

「色恋、時と場所を選ばず」とはよく言ったもの。

それだけ町が活気づいていたという証拠でしょう。

遊郭跡地で戯れるイーゴリー
            遊郭跡地で戯れるイーゴリー 

1920年(大正9)1月、トレピーチン率いる赤軍パルチザンが尼港(ニコラエフスク)の町を包囲します。

このトレピーチンという男、

第1次世界大戦ではロシア軍の下士官として出征しましたが、その後はウラジオストックの赤軍パルチザンに入隊し、
最近になってハバロフスク支部で革命教育を受けていました。

ロシア革命の終盤、ロシア中の町が革命か帝政かで揺れ動いており、

ペテルブルグからモスクワ、

そして東方面へと革命軍が順次勢力を伸ばしつつあり、

ついに尼港(ニコラエフスク)にも革命の嵐が迫っていたのです。

尼港に赤旗を!

ハバロフスク支部より指令を受けたトレピーチンは、
副官としてレベデワ(女性)を伴って尼港を目指します。

ハバロフスクから尼港までは陸上で約800kmの距離。

もちろん、アムール川を含めて海上輸送は氷に閉ざされて不可能です。


陸路の長い遠征で2人は恋仲に・・・。

彼らは、

ハバロフスク支部より尼港(ニコラエフスク)の町を革命派に属するよう指示を受けていたとはいえ、

正規の共産党員でもなく、所詮は一旗揚げよう組の一派です。

徒党のゆえ、残忍極まりない無法者に成り下がる可能生もありました。

その間にも、ロシアに点在する町々には、革命派の手が忍び寄っています。

トレピーチン一党が尼港(ニコラエフスク)に辿り着いたときは
4000人を超える支持者で膨れ上がっていました。

町からも革命派に寝返る人たちが激増、帝政派(白系ロシア)は日毎に不利になって行く状況に・・・。

そして1月中旬、

ついに町は戦乱の渦に突入・・・。

緒戦は、あっという間に革命軍の勝利となります。

当時の尼港市街図



ここで、現地住民たちは日本の尼港守備隊に町の防衛を託します。

衆寡敵せずとはいえ、守備隊長の石川正雅少佐は最後の臨みを託して、

町に夜間外出禁止を出して守りを固めます。

ここに乾坤一擲の戦いが始まろうとしています。

守備隊を含めた734人の居留民。

この中には当然、女性や子供も含まれています。
それと白系ロシア人との混成部隊がどうやって赤軍パルチザンと戦うのか。

若者や女性、そして民間人までもが自警団や義勇軍を結成して守備隊の傘下に入りました。

果たして「お菊姐さん」はどうしていたのか。その運命は如何に!

これから、パルチザン本部跡へ行ってみましょう。






大日本帝国の轍 土方 聡 ひじかたそう


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